2014-10-01から1ヶ月間の記事一覧

「力」を失って見えたもの ル=グウィン『帰還 ゲド戦記 最後の書』

帰還作者:アーシュラ・K・ル=グウィン岩波書店Amazon大きなショックとともに『帰還 ゲド戦記 最後の書』(原題Tehanu, The Last Book of Earthsea)を読み終えた。ゲド戦記シリーズは1968年から72年の間に第1巻から第3巻までが発表されている。しかし、本書…

イロニーとしての月と星 稲垣足穂『一千一秒物語』

一千一秒物語 (新潮文庫)作者:足穂, 稲垣新潮社Amazonある夜倉庫のかげで聞いた話 「お月様が出ているね」 「あいつはブリキ製です」 「なに ブリキ製だって?」 「ええどうせ旦那 ニッケルメッキですよ」(自分が聞いたのはこれだけ) (「一千一秒物語」)…

絡み合う髪 朝吹真理子『きことわ』

きことわ (新潮文庫)作者:朝吹 真理子新潮社Amazonこの小説のすごさをどう説明すればいいだろう。新潮文庫版の解説で町田康は「そこには夢と脈絡が調和を保ち、いずれ死ぬる私たちが平生、けっして感知・感覚できない景色がある」「官能という言葉の本来の意…