2016-03-01から1ヶ月間の記事一覧

辺境としてのダブリン ジョイス『ダブリン市民(ダブリナーズ)』

ダブリナーズ (新潮文庫)作者:ジェイムズ ジョイス新潮社Amazon 20世紀文学に決定的な影響を与えたジェイムズ・ジョイスの代表作と言えば、『ユリシーズ』。「意識の流れ」という手法のイメージが強いジョイスだが、短編集『ダブリン市民』は、読みやすいリ…

ふたりのレーヴィ プリーモ・レーヴィ『天使の蝶』

天使の蝶 (光文社古典新訳文庫)作者:プリーモ レーヴィ光文社Amazon プリーモ・レーヴィはどうやらふたりいるようだ。化学者のレーヴィと作家のレーヴィ。さらに作家としても『アウシュヴィッツは終わらない(原題:これが人間か)』『休戦』などナチスの強…

蝶と幻 ウラジーミル・ナボコフ『ナボコフの一ダース』

ナボコフの一ダース (ちくま文庫)作者:ウラジミール ナボコフ筑摩書房Amazon ナボコフと言えば、問題作『ロリータ』で知られる20世紀を代表する作家。その他の作品も最近は岩波文庫や光文社古典新訳文庫で簡単に手に入るが、「難解」なイメージがある。本書…

時間というオブセッション J・G・バラード『ザ・ベスト・オブ・バラード』

ザ・ベスト・オブ・バラード (ちくま文庫)作者:J.G. バラード筑摩書房Amazon『ザ・ベスト・オブ・バラード』は1960年代に人間の精神世界(インナー・スペース)をSF小説に取り入れ、ニューウェーブと呼ばれたJ・G・バラードの自選短編集(原著は17篇だが、日…