2011-09-01から1ヶ月間の記事一覧

うそから出たドタバタ ジッド(ジイド)『法王庁の抜け穴』

法王庁の抜け穴 (1970年) (岩波文庫)作者:アンドレ・ジイドAmazon ローマ法王が実はにせもの!? 聖職者になりすました天才詐欺師プロトスが、ある秘密結社によって法王庁の地下室に幽閉された本物の法王を救い出すなどと奇想天外なうそをでっち上げたことから…

二次元の嫁? ホフマン『黄金の壺』

黄金の壺 (岩波文庫)作者:ホフマン岩波書店Amazon 何をやってもダメな大学生アンゼルムスが黄金に輝くかわいい小蛇(!)にひとめぼれ。「(…)愛らしい金の蛇たち、どうかもう一度あの鈴のような声を聞かせておくれ! もう一度だけぼくに目をむけてくれ、き…

虚構と実像 ウラジーミル・ナボコフ『セバスチャン・ナイトの真実の生涯』

セバスチャン・ナイトの真実の生涯 (講談社文芸文庫)作者:ウラジミール・ナボコフ講談社Amazon 長編三冊、短編集一冊、さらに一冊の自叙伝を残し夭折した作家、セバスチャン・ナイトの伝記を書くため、腹違いの弟がその生涯をたどる。語り手である弟にとって…

言葉と世界 ボルヘス『砂の本』

砂の本 (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫)作者:ボルヘス集英社Amazon 文庫の解説者土岐恒二によると、ボルヘスの論文「ジョン・ウィルキンズの分析的言語」は、奇妙な動物分類に関する中国の架空の百科事典の記述を引いているという。それは次のようなも…

「わたし」の歩み 山田稔『残光のなかで』

残光のなかで (講談社文芸文庫)作者:山田 稔講談社Amazon『残光のなかで』には、1967年に書かれた表題作「残光のなかで」から95年の「リサ伯母さん」まで8つの短編が収められている。年代順に収録されたそれらの短編を読めば、作者山田稔の歩みをたどること…

時代からはみ出す 小林信彦『袋小路の休日』

袋小路の休日 (講談社文芸文庫)作者:小林 信彦講談社Amazon 栗田有起の次に小林信彦。こんな脈絡のない読書もないな。『マルコの夢』が過激な夢の世界とビルドゥングスロマンの融合というサーカスの曲芸のような小説だったので、それと正反対の「よくできた…