2015-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ただ読むという、たのしみ 朝吹真理子『流跡』

流跡 (新潮文庫)作者:朝吹 真理子新潮社Amazon『きことわ』がおもしろかったので、手に取った。本書『流跡』には、朝吹真理子のデビュー作にあたる中編「流跡」と短編「家路」の二篇が収録されている。『きことわ』は25年の年月を経て再会した女性ふたりの官…

言語のふしぎ 円城塔『道化師の蝶』

道化師の蝶 (講談社文庫)作者:円城 塔講談社Amazon『道化師の蝶』は、芥川賞を受賞した表題作と「松ノ枝の記」の二作の中編小説が収録されている。「道化師の蝶」も「松ノ枝の記」も、言葉の持つ不思議をとことんまで突き詰めようとした、いわば「言語小説」…

影とは何か その2 河合隼雄『影の現象学』

影の現象学 (講談社学術文庫)作者:河合 隼雄講談社Amazon 影とは何か。本書『影の現象学』において河合隼雄は、ユングの影のイメージを手がかりに、様々な位相における影のありかたに迫ろうとする。ユング心理学における「影」の概念は、個人的な影のイメー…

影とは何か その1 シャミッソー『影をなくした男』

影をなくした男 (岩波文庫)作者:シャミッソー岩波書店Amazon「どこに影を置き忘れてきなさった?」 「あれまあ、あの人、影がないじゃないの!」 「ちゃんとした人間なら、おてんとうさまが出りゃあ影ができるのを知らねえか」 主人公ペーター・シュレミール…