2011-11-01から1ヶ月間の記事一覧

詩人の幻視と『猫の町』 萩原朔太郎『猫町』

猫町 他十七篇 (岩波文庫)作者:萩原 朔太郎岩波書店Amazon 萩原朔太郎の『猫町』を思い出したのは、村上春樹の『1Q84』を読んだからだ。BOOK2第8章で主人公の天吾は認知症の父親が入院している療養施設に出かける。そのとき列車の中で天吾が読んでいたのが『…

男? 女? いいえ、詩人です(奇妙な伝記その2) ヴァージニア・ウルフ『オーランドー』

オーランドー (ちくま文庫)作者:ヴァージニア ウルフ筑摩書房Amazon メキシコ独立のために戦った実在の修道士セルバンド師の生涯を描く『めくるめく世界』の中で、レイナルド・アレナスは、ロンドンを訪れたセルバンドとオーランドーとの出会いを描いている…

フィリフヨンカの不安、ニョロニョロのいのり トーベ・ヤンソン『ムーミン谷の仲間たち』

新装版 ムーミン谷の仲間たち (講談社文庫)作者:トーベ・ヤンソン講談社Amazon 子供のころ、『ムーミン谷の彗星』という本を読んだ。すごくおもしろかったという記憶はあるのに、もうどんな話だったか覚えていない。そんなわけで、ある人が梅田のその日2軒…

魂とごっこのあいだ 松浦理英子『ナチュラル・ウーマン』

ナチュラル・ウーマン作者:松浦 理英子河出書房新社Amazon かつて河合隼雄は女子高生の援助交際について「魂を傷つける」と発言し、多くの賛同と批判の声が寄せられた。反響の中心は「魂」ということばの当否である。ここで河合の発言が適当であるかは問わな…