2018-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ところできみたち、二人なの、一人なの? 柴崎友香『寝ても覚めても』

寝ても覚めても (河出文庫)作者:柴崎 友香河出書房新社Amazon 朝子は大阪のとある高層ビルの展望フロアで、麦(ばく)という男の子に出会い、一目惚れ。やがてつきあいはじめた。麦は気のおもむくままに行動する人で、どこへ行くともなくふらっと出かけて数…

奔放な想像力の冒険 イタロ・カルヴィーノ『不在の騎士』

不在の騎士 (河出文庫)作者:イタロ・カルヴィーノ河出書房新社Amazon『不在の騎士』は『木のぼり男爵』『まっぷたつの子爵』に続くイタロ・カルヴィーノの『我々の祖先』三部作の最終章。エスカルゴを食べるのを拒否して木の上で生活するとか、真っ二つの半…

他人と暮らすのは楽じゃない ニック・ホーンビィ『いい人になる方法』

いい人になる方法 (新潮文庫)作者:ニック ホーンビィ新潮社Amazon ケイティ。結婚24年目、職業医師、子ども2人、地元紙に「ホロウェイで最も怒れる男」と題するコラムを書くほかは仕事らしい仕事をしていない夫は口を開けば皮肉ばかり。彼女は実はあまりよく…

本当の戦争を語るには ティム・オブライエン『本当の戦争の話をしよう』

本当の戦争の話をしよう (文春文庫)作者:ティム・オブライエン文藝春秋Amazon 短編集『本当の戦争の話をしよう』には、22の短編が収められており、そのすべてがティム・オブライエン自身の従軍体験をもとにしたベトナム戦争の話だ。彼は歩兵としてベトナム戦…

国家の感触 ポール・オースター『リヴァイアサン』

リヴァイアサン (新潮文庫)作者:ポール オースター新潮社Amazon 一人の男がウィスコンシン州北部の道端で自作中だった爆弾の暴発により爆死した。その6日後、作家ピーター・エアロン(語り手「私」)のもとにFBIの捜査官が訪れたことで、彼は爆弾でバラバラ…

監獄の千夜一夜物語 マヌエル・プイグ『蜘蛛女のキス』

蜘蛛女のキス (集英社文庫)作者:マヌエル・プイグ集英社Amazon「眠れないんだ。なあ、映画の話してくれよ。黒豹女みたいなやつ、他に覚えてないかな」 「ああいう怪奇映画ならたくさんあるわよ。『ドラキュラ』『狼男』…」 「他には?」 「『甦るゾンビ女』…

短編の名手が仕掛ける毒 ロアルド・ダール『あなたに似た人』

あなたに似た人〔新訳版〕 I 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕作者:ロアルド・ダール早川書房Amazon「短編の名手」と言えば、チェーホフを別格として、O・ヘンリーとか、モーパッサン、ヘミングウェイ、サキ、カポーティ、レイモンド・カーヴァー、ボルヘス…など…