2016-12-01から1ヶ月間の記事一覧

「楢山節」というファンタジー 深沢七郎『楢山節考』

楢山節考 (新潮文庫)作者:七郎, 深沢新潮社Amazon もっと悲惨な話を想像していたというとヘンかもしれない。棄老伝説をもとに深沢七郎が書き上げたのは、食べ物が乏しい山間の寒村で、七十になった老人を山に捨てるという十分に悲惨な話だからだ。しかし、読…

物語と作者の逆説的な関係 いしいしんじ『雪屋のロッスさん』

雪屋のロッスさん (新潮文庫)作者:いしい しんじ新潮社Amazon タクシー運転手、調律師、図書館司書、床屋、警察官…。短編集『雪屋のロッスさん』は様々な職業の人物を主人公にした31の短編が収められている。といっても、大泥棒、雪屋、雨乞いなんて変わり種…

少年の世界 その2 ジュール・ヴェルヌ『十五少年漂流記』

十五少年漂流記 (新潮文庫)作者:ジュール・ヴェルヌ新潮社Amazon『海底二万里』『八十日間世界一周』などで知られ、H・G・ウェルズとともにSF小説の祖とも呼ばれるジュール・ヴェルヌの少年小説。十五人の少年だけが乗った帆船スルギ号が悪天候により難破し…

「千代なるもの」とは何か 梨木香歩『f植物園の巣穴』

f植物園の巣穴 (朝日文庫)作者:梨木 香歩朝日新聞出版Amazon ぼくは梨木香歩の熱心な読者ではない。『家守綺譚』も楽しんだ一方で、ときに可憐で、ときにいたずらっぽい異界の者たちを必死に守ろうとする家守の姿に現代に「怪異を書く」ことの困難を感じた。…