2015-10-01から1ヶ月間の記事一覧

トランシーバーのゆくえ 今村夏子『こちらあみ子』

こちらあみ子 (ちくま文庫)作者:今村 夏子筑摩書房Amazon 又吉直樹のような有名人が芥川賞を受賞する効果の一つに「文学」への注目が高まるということがある。『こちらあみ子』は、又吉さんのおすすめ本の一冊。本屋で手に取ってみたら、なんと太宰治賞、三…

みんな「手なし娘」を読むといい 河合隼雄『昔話と日本人の心』

昔話と日本人の心 (岩波現代文庫 学術 71)作者:河合 隼雄岩波書店Amazon『昔話と日本人の心』は、河合隼雄の数多い著作の中でもとくに名著として名高い。河合は、西洋の近代的自我の成立過程を解き明かしたユング派分析家エーリッヒ・ノイマンの『意識の起源…

女と男、ふたつの『櫻の園』 吉田秋生『櫻の園』

櫻の園 白泉社文庫作者:吉田 秋生白泉社Amazon 中原俊の映画『櫻の園』(1990)は、思春期の瞬間を結晶させたような透き通った美しさを感じさせる青春映画の傑作だ。その原作である吉田秋生の『櫻の園』を読んで、「女」と「男」という途方もなく古典的な対…

幽霊とリアリズム 三遊亭円朝『怪談牡丹燈籠』(かいだんぼたんどうろう)

怪談 牡丹燈籠 (岩波文庫)作者:三遊亭 円朝岩波書店Amazon カランコロンと下駄の音をさせながら、旗本の娘お露の幽霊が恋人萩原新三郎のもとにやってくる…。三遊亭円朝の『怪談牡丹燈籠』は、この有名な幽霊話と、孝助の仇討ちの顛末が交互に語られる。人物…

因果はめぐる 三遊亭円朝『真景累ヶ淵(しんけいかさねがふち)』

真景累ケ淵 (岩波文庫)作者:三遊亭 円朝岩波書店Amazon「今日より怪談のお話を申し上げまするが、怪談ばなしと申すは近来大きに廃りまして、余り寄席で致す者もございません、と申すものは、幽霊と云ふものは無い、全く神経病だと云ふことになりましたから、…