2011-12-01から1ヶ月間の記事一覧

「愚行」の軽さ 阿部和重『シンセミア』

シンセミア〈1〉 (朝日文庫)作者:阿部 和重朝日新聞社Amazon 1999年に連載が始まり、4年をかけて完成されたという長編小説。悪というか、人間の愚かなふるまいを書き尽くした小説という印象を持った。そして、読みだしたらやめられない。怖いのに、というか…

散歩の人生 武田泰淳『目まいのする散歩』

目まいのする散歩 (中公文庫)作者:武田 泰淳中央公論新社Amazon この本は武田泰淳最晩年の作品で、脳卒中(?)で倒れてから、口述筆記で書かれた世にも不思議な「散歩」の記録。 病を得てからも、泰淳は妻・百合子と明治神宮や靖国神社、代々木公園などを歩…

あきらめきれない人々 岡本かの子『老妓抄』

老妓抄 (新潮文庫)作者:かの子, 岡本新潮社Amazon 長年お座敷をつとめた老妓が、発明で一山当てたいという若い男に住む家と生活費を与え、好きなようにやってごらんという。老妓が年甲斐もなく若い男を囲っているとうわさもたつが、なぜ老妓が自分を養ってく…

厠の陰翳 谷崎潤一郎『陰翳礼讃』

陰翳礼讃 (中公文庫)作者:谷崎 潤一郎中央公論新社Amazon 職場の同僚と谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』の話になった。同僚は谷崎が厠の風情に言及するくだりをしきりにほめて、とてもよくわかるという。 「(…)日本の厠は実に精神が安まるように出来ている。それ…