2011-07-01から1ヶ月間の記事一覧

だって女の子だもん 奥田英朗『ガール』

ガール (講談社文庫)作者:奥田 英朗講談社Amazon 男ですいませんなんて、めんどくさいこというなあと思っていた。もっとひどいのになると人間だものってのもある。もし「だって犬だもの」って犬がいったら、どう思うって言った人がいた。そう。この手の言い…

死にかたカタログ ギュンター・グラス『ブリキの太鼓』

ブリキの太鼓 1 (集英社文庫)作者:ギュンター・グラス集英社Amazon 池内紀訳の『ブリキの太鼓』が出てる! ここ10年ぐらい、いろんな作品の新訳ラッシュ。新訳がいいとはかぎらないけど、集英社文庫版の翻訳、いまいちだったしなあ。 何年か前に『考える人』…

よみがえる記憶 その2 後藤明生『挟み撃ち』

挾み撃ち (講談社文芸文庫)作者:後藤 明生講談社Amazon 「あの外套はいったいどこに消え失せたのだろう」 何の前触れもなく、この程度の疑問に襲われることは、よくある。ぼくらは日々、何かを思い出したり、忘れたりしている。『挟み撃ち』の中年男の主人公…

よみがえる記憶 その1 宮沢章夫『サーチエンジン・システムクラッシュ』

サーチエンジン・システムクラッシュ (文春文庫)作者:宮沢 章夫文藝春秋Amazon 「生きているのか、死んでいるのかわからない。そのあいまいさに耐えられるのか」 ある日、学生時代の同級生が起こした殺人事件の新聞記事を目にしたことをきっかけに、主人公の…

幽霊との対話 川上弘美『真鶴』

真鶴 (文春文庫)作者:川上 弘美文藝春秋Amazon 何の前触れもなく夫は姿を消し、夫の日記には「真鶴」という謎めいた言葉が残されていた。こんなふうに書くと、まるでサスペンスドラマの始まりのようですが、『真鶴』は、夫の失踪によって受けた心の傷から、…

玄関先に立つ客 色川武大『怪しい来客簿』

怪しい来客簿 (文春文庫)作者:色川 武大文藝春秋Amazon 「お前はいつも本気になっていない」と教師がいった。「向上心がかけておる。この世には尊いものと、賤しいものとがあるがね。お前は自分がどうなろうとしているか、わかるか」 「どっちにもなりたいで…

重なる時間 吉田健一『怪奇な話』

怪奇な話 (中公文庫 A 50-6)作者:吉田 健一中央公論新社Amazon 魔法使いが自分の腕試しのために島をうごかす話(「山運び」)とか、月に魅せられ、いつも月のことばかり考えている大工の話(「月」)とか、旅先の宿で瀬戸内海を眺めていると、水軍の船団が現…