だって女の子だもん 奥田英朗『ガール』

 男ですいませんなんて、めんどくさいこというなあと思っていた。もっとひどいのになると人間だものってのもある。もし「だって犬だもの」って犬がいったら、どう思うって言った人がいた。そう。この手の言い訳はかなりうざい。もちろん、女もそう。女だから。でも、男のほうが女のくせにという場合もあってややこしい。女だてらに。これは女子への圧力です(笑)。最近は、「女子」とか「ガール」とかってことばが、ある種のメンタリティの受け皿になっている(マスコミが言ってるだけ?)。
 奥田英朗の『ガール』は、働く30代の女性のゆれる気持ちをすごくリアルに描いた短編集。注目点はファッション。キャラの設定は、ファッション描写に負うところが大きい。大手広告代理店勤務、光山晴美(38)「水玉のフレアスカートにキャミソールを合わせ、その上にカーディガンを肩掛けにしていた。しかもサングラスを頭に載せている」愛読書は『CanCam』。光山と対照的な存在として描かれるのは、顧客の百貨店に勤務する安西博(32)。「キャリアチックな紺のスーツ」「保護者参観のようなプレーンなパンプス」(「ガール」)。もちろん、二人がうまくいくはずもなく…。
 「マンションを買うって、今の自分とちゃんと向き合うことだと思う」なぜ、マンションを買うことが「今の自分と向き合う」ことになるのか。それは「結婚しないかもしれないこの先の人生を、候補のひとつとしてちゃんと認知するべき」(「マンション」)だから。働く30代女性の葛藤があり、敵がいる。でも、最後はすっきり。プロの仕事を堪能。