2018-01-01から1ヶ月間の記事一覧

意外な奥行 マラマッド『マラマッド短編集』

魔法の樽 他十二篇 (岩波文庫)作者:マラマッド岩波書店Amazon 新潮文庫の『マラマッド短編集』(加島祥造訳)はマラマッドの最初の短編集である『魔法の樽』の全訳。あまり期待せずに読み始めて、「あれっ」てなって、気がついたら「読んでよかった」になっ…

引き裂かれた世界 イタロ・カルヴィーノ『まっぷたつの子爵』

まっぷたつの子爵 (岩波文庫)作者:カルヴィーノ岩波書店Amazon(ネタバレ)カルヴィーノの代表作は? と聞かれると、答えに窮する人も、好きな作品は? と言われると、寓話的でファンタジー色の濃い「我々の祖先三部作」シリーズ、中でも、エスカルゴを食べ…

ルツィエの沈黙 ミラン・クンデラ『冗談』

冗談 (岩波文庫)作者:ミラン・クンデラ岩波書店Amazon みすず書房版の『冗談』には、丁寧にも「著者まえがき」「著者あとがき」が付いていて、クンデラ自身がこの小説をどう読んでほしいか解説を書いている(「肉体と精神の乖離をめぐる悲しいラブストーリー…

巨大な幽霊 梨木香歩『冬虫夏草』

冬虫夏草 (新潮文庫)作者:香歩, 梨木新潮社Amazon 本書『冬虫夏草』は駆け出しの物書きである主人公綿貫征四郎が狐狸、河童、植物の精などさまざまな異界のものたちと出会う『家守綺譚』の続編。『家守綺譚』を読んでいるとき考えていたのは、現代の作家がど…