イタリア文学

奔放な想像力の冒険 イタロ・カルヴィーノ『不在の騎士』

不在の騎士 (河出文庫)作者:イタロ・カルヴィーノ河出書房新社Amazon『不在の騎士』は『木のぼり男爵』『まっぷたつの子爵』に続くイタロ・カルヴィーノの『我々の祖先』三部作の最終章。エスカルゴを食べるのを拒否して木の上で生活するとか、真っ二つの半…

引き裂かれた世界 イタロ・カルヴィーノ『まっぷたつの子爵』

まっぷたつの子爵 (岩波文庫)作者:カルヴィーノ岩波書店Amazon(ネタバレ)カルヴィーノの代表作は? と聞かれると、答えに窮する人も、好きな作品は? と言われると、寓話的でファンタジー色の濃い「我々の祖先三部作」シリーズ、中でも、エスカルゴを食べ…

ふたりのレーヴィ プリーモ・レーヴィ『天使の蝶』

天使の蝶 (光文社古典新訳文庫)作者:プリーモ レーヴィ光文社Amazon プリーモ・レーヴィはどうやらふたりいるようだ。化学者のレーヴィと作家のレーヴィ。さらに作家としても『アウシュヴィッツは終わらない(原題:これが人間か)』『休戦』などナチスの強…

カルヴィーノの古典案内、あるいはhide-behind イタロ・カルヴィーノ『なぜ古典を読むのか』

なぜ古典を読むのか (河出文庫)作者:イタロ・カルヴィーノ河出書房新社Amazon「1 古典とは、ふつう、人がそれについて、『いま、読み返しているのですが』とはいっても、『いま、読んでいるところです』とはあまりいわない本である」 カルヴィーノは本書『な…

中世の推理小説は可能か ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』

薔薇の名前〈上〉作者:ウンベルト エーコ東京創元社Amazon 中世北イタリアの僧院で、修道士たちが次々と謎の死を遂げる。折しも僧院では「清貧論争」において対立するフランシスコ会とアヴィニョン教皇を代表する使節団による会談が行われようとしていた。事…

幽霊としての都市  イタロ・カルヴィーノ『見えない都市』

見えない都市 (河出文庫)作者:イタロ カルヴィーノ河出書房新社Amazon 奔放な想像力を楽しめる小説をもう一つ。カルヴィーノの『見えない都市』は、マルコ・ポーロが数々の旅で見聞した奇想天外な都市を元の皇帝フビライ汗に報告するといういわゆる枠物語の…

旅の気分 アントニオ・タブッキ『インド夜想曲』

インド夜想曲 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)作者:アントニオ タブッキ白水社Amazon インドで行方不明になった友人を探すためにボンベイ、マドラス、ゴアという3都市をめぐる「僕」の物語。 実在するホテル、鉄道・バス路線、団体などが登場し、風変わりな…