2011-06-01から1ヶ月間の記事一覧

感覚とことば 江國香織について

このブログの『間宮兄弟』の感想を読んでくれた人が「そうじゃないんだけどなあ」というような不満を口にした。その人は世間の『間宮兄弟』評にも納得がいかないという。ぼくは「直美が花火大会で感じた楽しさの何%かは、本来なら彼氏とのつきあいで得るべ…

過去との死闘 坂東真砂子『死国』

死国 (角川文庫)作者:坂東 眞砂子KADOKAWAAmazon 幼なじみで、いちばん仲がよかった沙代里ちゃんはどうしているだろう。小学生時代を過ごした高知の山間の村を20年ぶりに訪れた比奈子。しかし、沙代里は中学時代に亡くなっていた。その上、比奈子は沙代里の…

これを「甘い」とする 岡倉覚三(岡倉天心)『茶の本』

茶の本 (岩波文庫)作者:岡倉 覚三岩波書店Amazon 1906(明治39)年、『THE BOOK OF TEA』という小さな本がニューヨークの出版社から刊行された。時代は日露戦争の2年後。歴史の教科書では岡倉天心という名で載っていた、その人の主著は3冊。すべてが英語で書…

2+1 その2 江國香織『ぼくの小鳥ちゃん』

ぼくの小鳥ちゃん作者:江國 香織新潮社Amazon「小鳥ちゃんはいきなりやってきた。 雪の降る寒い朝で、ぼくはいつものように窓の前に立ち、泡の立ったミルクコーヒーを啜っていた」 仲間とはぐれた小鳥ちゃんと「ぼく」の「二人暮らし」が始まる。小鳥ちゃん…

2+1 その1 山本昌代『居酒屋ゆうれい』

居酒屋ゆうれい (河出文庫文芸コレクション)作者:山本 昌代河出書房新社Amazon 『居酒屋ゆうれい』は映画にもなったし、山本昌代の小説では売れたほうだと思うけど、もう絶版なんかなあ。 若い女と再婚した夫のもとへ、病没した前妻が幽霊となって現れる。 …

脱出の意味 ポール・オースター『最後の物たちの国で』

最後の物たちの国で (白水Uブックス―海外小説の誘惑)作者:ポール・オースター白水社Amazon ポール・オースターは90年代にいわゆるニューヨーク三部作(『ガラスの街』『幽霊たち』『鍵のかかった部屋』)が紹介され、多くの読者を獲得しました。彼がニューヨ…