2+1 その1 山本昌代『居酒屋ゆうれい』

 『居酒屋ゆうれい』は映画にもなったし、山本昌代の小説では売れたほうだと思うけど、もう絶版なんかなあ。 
 若い女と再婚した夫のもとへ、病没した前妻が幽霊となって現れる。
さては嫉妬に狂ってのことかと思いきや、そうでもない。前の奥さんが亡くなるとき、夫は再婚はしないと約束し、じゃ、うそついたら化けて出るよという言葉通りに出てきたまでだというんです。
 その日から、夫婦二人に幽霊一人という奇妙な共同生活が始まります。最初は怖がっていた若い奥さんも幽霊に悪意がないとわかってきて、だんだん親しくなってくるし、「姉さんって呼んでいい?」なんて言い出す始末。
 おかしいやら、せつないやらわけわからんなという感じになったころ、死んだらおわりじゃないんだという感慨がぐっとこみあげてきました。
 最近、人は現実と夢の配合の中で生きるということを考えていて、この前見た映画『パーマネント野ばら』はすごくおもしろかった。菅野美穂演じる女性の場合、そのバランスが崩れていたけど、人が生きるというのはあんなもんじゃないかとも思うんです。
 山崎ナオコーラの『人のセックスを笑うな』ではユリに会えなくなった磯貝くんは言います。「会えなければ終わるなんて、そんなものじゃないだろう」。そうむしろここから始まるのだと。