2012-05-01から1ヶ月間の記事一覧

女子高生の描き方 その1 山田詠美『放課後の音符』

放課後の音符(キイノート) (新潮文庫)作者:詠美, 山田新潮社Amazon「良い大人と悪い大人を、きちんと区別出来る目を養ってください」 山田詠美は、女子高生の恋をテーマにした短編集『放課後の音符』のあとがきにこう書いている。「良い大人」「悪い大人」…

「物語」と「文学」のあいだ  大塚英志『物語の体操』

物語の体操―みるみる小説が書ける6つのレッスン (朝日文庫)作者:大塚 英志朝日新聞社Amazon「みるみる小説が書ける6つのレッスン」と副題の付された本書は、大塚英志が専門学校で担当していた講義もとにしていて、以下のような人々を読者として想定している…

恋愛、冒険、戦争、ミステリー、あるいはだまし絵  マイケル・オンダーチェ『イギリス人の患者』

イギリス人の患者 (新潮文庫)作者:マイケル オンダーチェ新潮社Amazon 第二次世界大戦の末期、フィレンツェの北に位置するサン・ジローラモ屋敷でハナという若い看護婦が全身にやけどを負った男を世話していた。男は「イギリス人」と名乗るが、その正体は不…

変わり続ける「いま」  野中柊『参加型猫』

参加型猫 (角川文庫)作者:野中 柊角川書店Amazon『参加型猫』という、なんとなく矛盾を含んでいるようなおもしろいタイトルに惹かれ、久しぶりに野中柊の本を手に取った。この作家の書くものは、奇妙に奥行きがなく、のっぺりした感じがする。勘吉と沙可奈と…