ラテンアメリカ文学

監獄の千夜一夜物語 マヌエル・プイグ『蜘蛛女のキス』

蜘蛛女のキス (集英社文庫)作者:マヌエル・プイグ集英社Amazon「眠れないんだ。なあ、映画の話してくれよ。黒豹女みたいなやつ、他に覚えてないかな」 「ああいう怪奇映画ならたくさんあるわよ。『ドラキュラ』『狼男』…」 「他には?」 「『甦るゾンビ女』…

時間と距離の遠近法 G・ガルシア=マルケス『十二の遍歴の物語』

十二の遍歴の物語 (新潮・現代世界の文学)作者:G.ガルシア マルケス新潮社Amazon ガルシア=マルケスと言えば、『百年の孤独』。コロンビアの架空の村コマンドを舞台にブエンディア一族の100年にわたる盛衰描いた長編小説は、圧倒的な密度、スピード、展開で…

永遠と瞬間 ボルヘス『不死の人(エル・アレフ)』

不死の人 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)作者:ホルヘ・ルイス ボルヘス白水社Amazon 読んだ本の内容を忘れるのは、何もボルヘスの短編に限ったことではない。しかし、ボルヘスの短編は、記憶として保存されない何かを語っているような気がしてならない。17…

監獄の中の冒険(奇妙な伝記その1) レイナルド・アレナス『めくるめく世界』

めくるめく世界 (文学の冒険シリーズ)作者:レイナルド・アレナス国書刊行会Amazon メキシコ生まれの実在の修道士にして革命家セルバンド・デ・ミエル師の数奇な生涯を奔放な想像力で描く伝記小説。説教に秀でたセルバンド師。メキシコのお歴々の居並ぶ中、グ…

言葉と世界 ボルヘス『砂の本』

砂の本 (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫)作者:ボルヘス集英社Amazon 文庫の解説者土岐恒二によると、ボルヘスの論文「ジョン・ウィルキンズの分析的言語」は、奇妙な動物分類に関する中国の架空の百科事典の記述を引いているという。それは次のようなも…