ロシア文学

高らかで繊細な文学宣言 ウラジーミル・ナボコフ『賜物』

賜物〈上〉 (福武文庫) 作者:ウラジーミル ナボコフ 出版社/メーカー: 福武書店 発売日: 1992/02 メディア: 文庫 革命により祖国ロシアを追われ、ベルリンで暮らす文学青年フョードルが作家として独り立ちするまでを描く自伝的長編小説。ナボコフの「はしが…

「美しい人」の両義性 ドストエフスキー『白痴』

白痴(上) (新潮文庫)作者:ドストエフスキー新潮社Amazon ドストエフスキーを久しぶりに読んだ。ドストエフスキーの小説は熱量が高い。作中人物がみな濃い。その過剰さが魅力。ドストエフスキー自身が「無条件に美しい人間」を描こうとしたという『白痴』は違…

蝶と幻 ウラジーミル・ナボコフ『ナボコフの一ダース』

ナボコフの一ダース (ちくま文庫)作者:ウラジミール ナボコフ筑摩書房Amazon ナボコフと言えば、問題作『ロリータ』で知られる20世紀を代表する作家。その他の作品も最近は岩波文庫や光文社古典新訳文庫で簡単に手に入るが、「難解」なイメージがある。本書…

未知のものを描くとは その2 A&B・ストルガツキー『ストーカー』

ストーカー (ハヤカワ文庫 SF 504)作者:アルカジイ ストルガツキー,ボリス ストルガツキー早川書房Amazon ファーストコンタクトもの第2弾は、アルカジイ&ボリス・ストルガツキーの『ストーカー』。タルコフスキーによって映画化されている点以上に、未知の…

語ること、生きること ツルゲーネフ『猟人日記』

猟人日記 上 (岩波文庫 赤 608-1)作者:ツルゲーネフ岩波書店Amazon帝政ロシア時代の貧しい農奴の生活を写実的に描いた連作中短編集。ツルゲーネフは農奴制を批判したとして逮捕されるが、アレクサンドル2世による農奴解放という決断に大きな影響を与えた…。…

虚構と実像 ウラジーミル・ナボコフ『セバスチャン・ナイトの真実の生涯』

セバスチャン・ナイトの真実の生涯 (講談社文芸文庫)作者:ウラジミール・ナボコフ講談社Amazon 長編三冊、短編集一冊、さらに一冊の自叙伝を残し夭折した作家、セバスチャン・ナイトの伝記を書くため、腹違いの弟がその生涯をたどる。語り手である弟にとって…