善意のリレー 有川浩『阪急電車』

 阪急電車今津線って、みなさん、知ってました? 宝塚から西宮北口を経由して、阪神電車に乗り換えができる今津駅までの短い路線なんだそうです。
 本書『阪急電車』は今津線の各駅を章のタイトルにして、いろいろな乗客のエピソードを数珠つなぎに描きます。そこに描かれるのは、ささやかな日常の一コマ。恋のはじまり、別れの決意、車窓からの珍しい風景。偶然乗り合わせた乗客同士が、ゆるやかにつながり合って明日への希望を見出していく。
 有川浩が作品の基調とするのは、あえて他人に関わろうとする意志によって生まれるモラル。登場人物たちは、まるでリレーのように人として恥ずかしくない生き方を学び、また教えようとします。売れてるんですよね、この本。フツーのまっとうさとは何かというのを知りたい人が多いんだなあと思いました。「お説教くさいちょっといい話」程度のものがよく売れるってことですね。