おじさんの語り 松山巌『くるーりくるくる』

 結婚式とか葬式とか法事とか、たまに親戚が一堂に会する機会にしか見かけないおじさん。調子がよくて、おしゃべりがうまく、みんなを笑わせるのが得意な人。そのくせ、一人でいるときは妙にさびしげで陰がある。何して食べてるのかもわからない。
 そんなおじさんが家族にまつわる話をしてくれる。父や母がまだ若かったころの話、もう生きているのかどうかもわからない人の話。
 おじさんの話は、ぼくの物語に思わぬ横道をつけたり、風穴を開けたりしてぼくを驚かす。『くるーりくるくる』はそんなおじさんの語りを楽しむ小説。時間が経つのは早い。ついさっきまでそこにいた人の姿はなく(くるーりくるくる)、街の風景はどんどん移り変わる(くるーりくるくる)。
 この小説の語りには、まるでアルバムのページをめくるような心地よさとさびしさがあります。